●方言ブームと火の用心
毎年、年末は町の夜警に参加している。
八時すぎになると詰め所でおばちゃん達が、おでんやうどんの支度を始める。男たちも次第に集まり、コップ酒や甘酒を手に手に、ひとしきり親睦会をすると町会長が「そんじゃ、一回りするか」と声をかけ、2~3班に分かれて、拍子木や電池入りの提灯を持って町会内をくまなく夜回りするのである。道中、町の昔の話なども聞けておもしろい。
拍子木の乾いたカチカチ音を上手に出すのはちょっとしたコツがいる。私も十数年続けているので、さすがに最近はいい音が出せるようになった。
やがて古老の一人が「火の用心しゃっしゃりやしょう」と声を出す。粋な言葉だ。
「しゃっしゃりやしょう」とは「なさいませ」「いたしましょう」の意味だという。
「♪ねんねこしゃっしゃりませ」と子守歌にもあるあの言葉だ。
最近、若者の間では方言ブームが起きているというが、どのような時と場合にどういうイントネーションで使うのかまでを知っている若者は少ないだろう。「あいよかけよ」も岡山地方の方言だとは聞いているが、元々はどういうシチュエーションで使ったのだろうか。
ともかく古老は「火の~ヨージン」カチカチ「しゃっしゃりやしょう」とやるのである。しゃがれた 江戸弁と拍子木の音が耳に心地よい。私にはまだ「しゃっしゃりやしょう」と言う勇気はない。しかし、こういう伝統と文化は末永く町に残ってほしいものである。
さて、この年末は少し勇気を出してみることにしようか。
(松本信吉)