●幸せの重さ
あなたを勇気づけ、 励ましてくれる3分間。
毎週月曜日に替わる「こころの電話」で紹介したお話を紹介しています。
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幸せの重さ
私は、仕事から早く帰ったときは、必ず四才の娘と一緒にお風呂に入ります。娘の体を洗ってあげながら、今日あったことを聞いたり、一緒に遊んだりするのはとても楽しいひとときです。そして最後に、湯船の中でいっしょに三十数え、抱っこしてお風呂から出ますが、子どもの柔らかな体の重みが心地よく、娘の小さな手が私の首にしっかりとしがみつきます。「ずいぶん大きくなったねえ。もうすぐ抱っこ出来なくなるねえ」。
そんな時、私は知り合いのおばあさんから聞いた話を思い出すのです。
今から六十年前、終戦直後、当時、中国大陸や朝鮮半島にいたたくさんの日本人が、いのちからがら祖国に帰ろうとしました。そのおばあさんの一家も、幼い娘の手を引き、引き揚げ船が待つ港を目指しました。長い道のりをひたすら歩き、貨物列車にすし詰めになりながらの逃避行です。途中の検問で、何度も子どもと引き裂かれそうになったり、疲労と絶望のあまり、現地の人に子どもを託そうと思ったこともありました。それでも気力をふりしぼり、なんとか帰国することが出来たのです。
しかし、なかには、途中で我が子と離ればなれになった人も多くいたそうです。その時の親ごさんたちは、どんな思いであったのでしょう。「生きてさえいればきっと会える」、そう思ったのかもしれません。
子どもと離ればなれになる、その親ごさんたちが感じたであろうわが子の重さと、今、こうして私がお風呂で感じている重さは、物理的には同じかもしれません。六十年の時に思いを寄せ、私は今、この心地よい重さを、この上ない幸せとして感じ、この幸せを子どもたちにも伝えていかねばならないと強く思うのです。