●峠の茶屋のおじさん
あなたを勇気づけ、 励ましてくれる3分間。
毎週月曜日に替わる「こころの電話」で紹介したお話を紹介しています。
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東京以外の地域からの電話
峠の茶屋のおじさん
卒業を間近に控えたある日、同じ大学の友人とぶらっとドライブに出かけた。話題はもっぱら卒業後の進路についてであった。
彼は大手スーパーに就職が決まっていて、アルバイトの経験もあった生鮮食料品売場を希望していた。
確かに彼は人当たりが良く、町の八百屋さんといった感じだ。「ぴったりだね。お客さん受けも良さそうだし、売上げ伸びるね」と言うと、なぜか彼の顔は曇り、「でも結局、客は店員の態度なんて関係ないんだよ。安く買えればそれでいいのさ」と言って、そのまま黙ってしまった。
しばらくして、一軒の店で遅い昼食をとることにした。さながら峠の茶屋といった感じであった。
客は僕たち二人だけであったが屋外の席に着き、山菜天ぷらソバを注文した。ところが注文したものがなかなかでてこない。
お店のおじさんはのんびりと「ごめんね、もうちょっと待ってて」「お兄さんたち、どこから来たの」と僕らに話しかけながら料理している。
やっとでてきたソバの上には、初めて見る山菜の天ぷらもある。この辺で取れるもので、今が旬なのだとおじさんは説明してくれた。
そんなやりとりに僕たちはすっかりくつろいでいた。食事の間もおじさんは時々話しかけてきた。
茶店を出ての帰り道、車の中で友人が、「さっきは、『客は店員の態度なんて関係ない』って言ったけど、やっぱり人との触れあいって大事だよね」と言った。僕は「そうだね」と答えながら、さっきのおじさんの姿に、スーパーで元気に野菜を売っている友人の姿を重ね合わせていた。
峠の茶屋のおじさんとの出会いが僕たちの心を温かく、和ませてくれ、とても楽しいドライブとなった。
帰り道、彼の顔は晴れ晴れとしていた。