●七十の雪かき
七十の雪かき
北海道にお住まいの森田さんは、今年で七十才になる女性の方です。現在は、息子さんと二人で暮らしています。
この冬は、早い時期から雪が降り始めました。
森田さんのお宅は表通りから少し引っ込んだところにあるので、いつも雪かきをしないと不便です。しかし、息子さんは朝早く仕事に出かけるため、雪かきをする時間もありません。そこで森田さんは、仕方なくスコップを握り、雪かきをしました。ところが、一時間もすると腰を痛めてしまいました。
仕事から帰ってきた息子さんからは、「年甲斐もないことをするからだ」と怒鳴られてしまいました。
「でも…」と言いかけて森田さんは、言葉をぐっと飲み込みました。「息子は、口調は強いのですが、黙って何かと家のことはしてくれるし、それに年齢を考ると、やっぱり雪かきは無理だったのかな」と思ったからでした。
しかし、それでも気持ちがおさまらない森田さんは、翌日、いつも参拝している金光教の教会に行って先生に話をしました。
先生は「何でも自分で、という自立心は結構ですが、そういう思いばかりでは、我(が)が強く出てしまいますよ。」と言われました。
「どういうことでしょう」と聞くと、「子供の世話になりたくない、そういう思いがありませんか。一緒に暮らしている者同士、任せるところは任せる、そして、お互いが世話になる、よい関係を作る事が大切ですよ。年をとれば出来ないことが出てくるのは当然です。できる事をさせてもらい、そして息子さんのお世話になったら、ちゃんと「ありがとう」と言えるようになりましょう。」
「そうですね。いつまでたっても息子は手のかかる子どもだという感覚があったかもしれません。これからはお互いお世話になり合いながら暮らしていきたいと思います」。森田さんは、穏やかな顔で教会を後にしました。