●子どもの命
子どもの命
とも子さんは、ひと月前に元気な男の子を授かり、今は子育てに一生懸命取り組んでいます。ところが、五日ほど前のこと、その子が急に母乳を飲まなくなってしまいました。ミルクは飲むので、発育に影響はありませんが、お乳が張って痛くて仕方がなく、乳腺炎も心配でした。
そこで彼女は、日頃お参りしている金光教の教会へ、子どもを抱いてお参りし、先生に事情を話して、子どもが母乳を飲みますように、お乳の張りがとれますように、乳腺炎などを患いませんように、とお願いしました。
すると先生は、「子どもの命のことをお願いすることが先決ではないでしょうか」と厳しくおっしゃったのです。彼女はとっさに、その言葉の意味が理解できませんでした。子どものことは生まれる前からお願いしているのに、今さら何のことだろうと思い、先生にその意味を尋ねました。先生は、「あなたは、自分のお乳の痛みや乳腺炎のことばかりお願いしていますが、子どもが母親のお乳を吸わないということは、本来なら、命を落とす大変なことなのですよ」とおっしゃるのです。
彼女はハッとしました。お乳が痛いということや、乳腺炎の心配に心を奪われて、わが子の命に関わることだと気づかなかったのです。
先生は続けて、「母乳を飲まなくても、この子がこうして元気でいるのは、ミルクを飲んでくれているからですよ。あなたのお乳の痛みのことも、神様にお願いしないといけませんが、まずは、この子が元気でいてくれていることをお礼申しあげ、健やかに育ってくれるよう、お願いすることが大切です」とおっしゃったのです。
抱いていたわが子を見ると、その子は大きな目を開けて黙って彼女を見上げています。とも子さんは、その子をぎゅっと抱きしめると、もう一度、神様に手を合わせました。