●大空を見上げよう
「智恵子は東京に空が無いという」
昭和の始め、高村光太郎が書いた詩です。
私は子供の頃、山に囲まれた田舎から、東京に出てきて、東京には山がない、ということをしきりに恨めしく思っていました。
事実、東京では、山どころか、土も自然の緑も、地方に比べれば大変少なく、わずかにでもあれば、それは大変貴重に感じられます。目につくものは、建物と車と人ばかりです。
けれども、そんな東京の真っ只中にいて、私は、ビルの間から、見えるだけの空をじっくりと見上げます。
わざわざ見ようとしないと、案外見ていない空です。今日が曇りか晴れかくらいは常にわかっていても、雲の流れ、その大きさ、その静けさには、気がつきにくいままで生活をしているのではないでしょうか。
私は、外に出るたびに、あの巨大な建物より遥かに高いところで、ゆっくりと動く大空を見上げ、日々、居ながらにして、高原に遊び、天地の間に包まれます。 畑 淳