●御霊のうれし涙
御霊のうれし涙
入院している恵子さんは、母親のお墓参りに行きたいと思いつつも、自由がきかない今の自分に、一人気をもんでいました。様子を見に東京から帰ってきてくれた息子に、「私の代わりに、おばあちゃんのお墓参りに行ってくれない」と、頼んだところ、快く引き受けてくれました。
その息子が、お墓参りから帰ってくるなり、こんな話をしてくれました。
「お母さん、御霊って本当にいるんだね。実はね、お墓の前でいつものようにお参りしていたんだよね。でも、今日は何故だか昔を思い出したりしてさあ。そう、学校へ通っていた頃のこと。弁当を作ってもらっていたじゃない。随分無理も言ったりさ。あの頃おばあちゃんを困らせることばっかりしてて、もう少しやさしくしてあげたら良かったね、ごめんよっ、て謝っていたら、急に雨が降ってきたんだ。あわてて軒下で雨宿りしていたら、一、二分であっという間に止んで、きれいな青空に戻ったんだけど…。僕が思うには、あれっておばあちゃんに呼びかけたもんだから、応えてくれたんだと思うなあ。やっぱり御霊っていうのはいるんだよねえ。」
恵子さんは、その話を聞いて、「それはきっと、おばあちゃんのうれし涙だったのね。おばあちゃんは、いつも私たちを見守ってくれているのよ。その働きを、こんな形で孫に見せてくれるなんて有り難いわねえ」と、言ったのでした。
豊かな心には、どんなことが見えてくるのでしょうか。そんなことを思わせてくれる恵子さん親子でした。