●モデルになった私
モデルになった私
「おばさん、写真のモデルになって下さい、ちょうど今探しているモデルにぴったりなんです」と、突然近所の信ちゃんに声をかけられました。信ちゃんとは、彼が幼い頃からわが子のように関わってきた仲です。
私は、「冗談じゃない、もう七十歳のおばあさんだからね」と断りましたが、まじめな顔で何度も頼まれると、照れながらもちょっと乗り気になって引き受けることにしました。さっそくスタジオに行って、試しに数枚の写真を撮ってもらいました。くわしく話を聞いてみると、市役所から出される介護保険の広告に使う写真を依頼されたのだそうです。
数日後、試しに写した写真をもって、信ちゃんがやって来ました。ところが、信ちゃんは申し訳なさそうに、「おばさん、実はデザインが変わって首から下しか使わなくなったんだ。それでも、引き受けてもらえますか」と言うのです。首から下なんて嫌だなあ、よっぽど断ろうかと思いましたが、信ちゃんの困った顔をみて、「いいよ。乗りかかった船だし」と言って引き受けました。
本番では、初めて見る介護用具を身につけたり、車椅子に座ってライトの前に三時間、緊張しながらも介護用具の一つひとつが、どのように生まれどのように使われているのかを思いながらの撮影となりました。
初めてのモデルの仕事は、介護を必要とする人や車椅子での生活をしている人たちのことを、改めて考えさせられる体験となりました。そして、今の私が元気で暮らしていることに改めて感謝するとともに、少しでもそういった人たちのお役に立てればと願っております。