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2007年10月01日

●「ひとつのことに心を込める」

あなたを勇気づけ、 励ましてくれる3分間。
毎週月曜日に替わる「こころの電話」で紹介したお話を紹介しています。

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「ひとつのことに心を込める」

 奥歯の痛みに耐えきれなくなった私は、久しぶりにかかりつけの歯医者さんに行くことにしました。
 診察室に入ると「あら~、久しぶり」「どうなされましたか?」と、おばあちゃん先生が笑顔で話しかけてくれました。このおばあちゃん先生は、私が幼い頃から診てもらている顔なじみの先生です。
 診察、治療はあっという間に終わり、「はい、もう大丈夫ですよ」との言葉にホッと一安心。しかし、その直後、「もう一カ所気になるところがあるから、ちょっとレントゲン撮らせてくれない」と少し神妙な面持ちでおっしゃいます。私は、少し不安を覚えながらも「お願いします」と先生にお任せしました。
 できあがった写真にライトを当てながら、先生は何も言わずにそのレントゲンをじっと眺めています。その沈黙に私の不安は増していく一方です。
 しかし次の瞬間、先生は私の方を向いて軽く微笑み、今回治療してもらった箇所とは違うところを指さしながら、「これ、覚えてらっしゃる? 以前貴方がここに来た時に治療した歯。この歯はね、実はもう抜くしかないのかなって思うくらいひどい状態だったの。でも、こんなにきれいに治ってますよ。もう大丈夫ね」とおっしゃいました。
 「ああ…」私はあまりに昔の出来事で、すっかり忘れていましたが、そのおばあちゃん先生は、その歯の経過を心配し、ずっと覚えてくれていたのです。
 
 私は、このおばあちゃん先生の診察を受けて、一つのことに心を込めることの尊さを思いました。
 歯医者が歯の一本一本を大切にすること。それは、たとえば料理人が料理一皿一皿に心を込めることと同じだと思います。また、家庭の主婦が家族のために家事に心を配ること。日常生活の中で、一人ひとりがそれぞれの役割の中で、一つひとつのことに心を込める。そうした心に感動し、感動した人がまた自分の役割の中で心を込めていく。それが、人間として生きていくということではないかと思いました。
 おばあちゃん先生のおかげで大切なことに気づかせてもらいました。それが嬉しくて、私は心の中で重ねてお礼を言いました。
 「おばあちゃん先生、ありがとう」
 

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