●ハグをください
ハグをください
数年前、オランダへ行ったときのことです。
私は、とある街のオープンカフェのテラスにパスポートが入ったバッグを置き忘れてしまい、慌てて店に引き返しました。
驚いたことに、そのわずかな時間に、置き忘れたバッグが他の人に持って行かれそうになり、それに気づいた若いウエーターが、取り返してくれていたのです。
危うく大事にならずに済んだということを知った私は、何かお礼がしたくてバッグの中を探しました。人に渡せるようなものは電卓ぐらいでしたので、その電卓を差し出し、どうか受け取って欲しいと申し出ました。
青年はパスポートが無事であったことをとても喜んでくれました。しかし、「その電卓はあなたが旅で必要なものだから」と受け取ってくれません。「これはお礼の気持ちです」と重ねて言う私に彼は、「そんなにおっしゃるなら、ハグを私にくださいますか?」と言いました。
ハグとは、両腕で抱きしめることです。
「えー、ハグ?!いいですとも!」私と青年はしっかりとハグをして、背中を叩き合いました。そのとき青年が、「あなたが日本で困った外国人に親切にしていただければ、それが一番嬉しいです」と言いました。
青年の言葉と行動の一つひとつが、私に感動を与えてくれました。
金光教の教祖様は、神様に助けられた人たちがそのお礼に何をお供えしたらよいかと尋ねたときに、「あなたが神様に助けていただいた喜びを、他の辛く苦しんでいる人たちに話してあげることが神様へのお礼になる」と言われていました。
喜びを伝えると言うことのすばらしさを、本当に実感しました。私のお礼のこころと青年ウエーターの喜びが混ざり合い、神様の喜びとなってまた私たちに降り注がれたような、ステキな出会いでした。