●思い合う心
さだまさしさんの「案山子」(かかし)の曲が流れると、亡き兄を思い出す。毎年暮れも押し迫ると、「元気か?年は越せるか?」と電話してきた。戦時中、極寒地での捕虜生活で性格が荒くなったと母は嘆いていたが、生を受けた時頂いた魂の真髄は変わる事が無いと思う。
以前大勢の人の集まりの中に、腰の曲がったお婆さんがいた。兄は「年はなんぼへ」と尋ねた。「80歳です」「そげえなるへ」と驚いていた兄は、「あんた気を付けて帰りなさいよ」と、まっ白い歯を見せ、肩をぽんぽんと叩いて、笑って送り出した。お婆さんの顔はみるみる明るく元気になり、腰を伸ばし「へい」と言って嬉しそうに帰って行った。兄の、相手を思いやる心がストレートに伝わって相手も元気になり、兄の本質を垣間見た気がした。
暮れに向かい、最近の暗いニュースの多い中で、せめて元気な心で、さだまさしさんのような温かい気持ちを込めて声を掛けたい。「お元気ですか?…」 岩田 幸子